「仲介手数料は原則0.5ヵ月分」判決 家を借りるときの“法律と業界知識”

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「仲介手数料は原則0.5ヵ月分」「手数料の一部返還」判決

8月8日(木)毎日新聞によって報じられた「賃貸の仲介手数料は原則0.5ヵ月」判決。

mainichi.jp

賃貸住宅を借りる際、よくよく振り返ると当然のように賃料一ヶ月分の仲介手数料を支払っていた、という方も少なくないだろう。
しかし、この判例からもわかる通り慣例的には一ヶ月分を支払うケースが多いものの、本来であれば賃貸の契約での仲介手数料は借り手も貸し手もそれぞれ「0.5ヵ月分」だ。

 

どこまでが法律上のOKラインであり、どこからが違うのか?

 

改めて、宅建業法を読み解いてみよう。

宅建業法ではもともと「原則0.5ヵ月分」。1ヵ月分は“上限”

そもそも宅建業法で仲介手数料(賃借契約)として請求できるのは「原則賃料の0.5ヵ月分(正確には賃料の0.54ヵ月分)」そして「上限1ヵ月(正確には賃料の1.08倍)」と定められている。

実際の国土交通省の告示では、以下のような記載だ。

第四貸借の媒介に関する報酬の額

宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の 額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は 建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものであ る場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・〇八倍に相当 する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方 から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている 場合を除き、借賃の一月分の〇・五四倍に相当する金額以内とする。

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額/国土交通省

 

仲介業者は貸し手と借り手双方から0.54ヵ月分ずつもらうことができる。これは、宅建業法上の”原則”ルールだ。ただし例外として“依頼者の承諾があれば”どちらか一方から上限1ヵ月分をもらうこともできる。

例えば、賃料が月40万円の場合、原則は21.6万円が借り手の支払う手数料であり、承諾を得ている場合のみ最大43.2万円までその金額は上がる。

ただし、この最大金額は、宅建業法によればあくまで「依頼者の一方 から受けることのできる報酬の額」。つまり、仲介業者が受け取る合計金額が賃料の1ヵ月分以内である限りは、(承諾があれば)どちらからいくらもらっても良い、というのが宅建業法での定めと理解できる。

「依頼者の承諾」とは具体的に何をさすのか

とはいえ、部屋を借りる際「本当は0.5ヵ月分でもよいが、一ヶ月分を支払ってください」と丁寧に説明を受けて支払った方は多くはないだろう。
この「依頼者の承諾」というのは、具体的には賃貸の媒介契約書の中で「報酬」について「賃料の1ヵ月分を支払うことに承諾する」といった文面が記載されており、契約が交わされた時点で同意したと見なされることが多い。

上乗せして一ヶ月分を支払う、ということを認識せずに契約した場合は、なかなか納得できるものではないだろう。

また、宅建業法に違反し貸し手と借り手の双方から仲介手数料として1ヵ月分を受け取っている(合計2ヵ月分以上)仲介業者も度々指摘されており、問題となっている。 

契約時に「0.5ヵ月分しか支払わない」と伝えたらどうなるのか

借り手側とすれば、こういったルールを知った以上は交渉をしたいところ。しかし、実際に交渉をした際に契約が不成立になる、信頼のおける仲介会社に出逢えていた場合、その関係を損ねるなどの状況は避けたい。

「0.5ヵ月分しか支払わない」と交渉した場合、自分が折れる以外に考えられるケースは2つある。

(A)契約が不成立になる

(B)仲介会社側が値引きなどに応じる

 

実際のケースを複数の業界関係者に聞いてみると、意外にも「(B)仲介会社側が値引きなどに応じる」がほとんどだという。これは単純な計算で、貸し手側は賃料の半額の交渉に対して、改めて別の検討者を探すコストや1〜2ヵ月以上の賃料収入をふいにするリスクを抱えているためだ。

しかし、都心の人気マンションを検討する際には「(A)契約が不成立になる」も念頭に置いておくべきだろう。

根強いファンの多いヴィンテージブランドマンションや、有名施設の跡地、駅前タワーの上層階など、希少性が高い有名物件に関しては、ウェイティングリストがあり条件に見合わなければ次の方へ、となる可能性もある。そもそも、郊外物件よりも、都心の人気アドレスの人気物件はそのアドレスの狭さと建てられる戸数に制限があることが多く、空きが出るのを待つ人がいる物件は少なくない。

どうしても住みたい、という場合にはこちら側にも交渉のリスクがあることを考えておくべきだろう。

「仲介手数料0円」物件の背景

昨今では、「仲介手数料0円」や「半額」をうたう仲介会社も増えてきた。
これは単純に、冒頭の宅建業法のルールの通り片側(この場合は貸し手)から手数料を受け取っている場合に、その分借り手側の負担が0円や半額などに減っているという形だ。

ただし、それ以外にも、次の入居者を早く見つけてもらうために広告費(AD)などの名目で仲介業者へ支払う料金を上乗せする場合がある。これを、実質手数料を規定額以上受け取っているとして問題視する声も多い。

冒頭の判決は、こういった業界の慣例ごと問いかねない、大きなニュースだったといえるだろう。

まとめ

仲介手数料は原則0.5ヵ月分(正確には賃料の0.54倍)で、一ヶ月分などそれ以上の金額を提示された場合、交渉は可能。ただし、人気物件ではリスクも伴う。

一ヶ月分というのはあくまで業界の慣習的な金額であったが、今回の判決でそれらが改めて議論の対象となる可能性が高いため、今後の動きを注視しておこう。